折元立身〈子ブタをおんぶする〉@青山目黒

CAPSULEでの折元立身の個展〈500人のおばあちゃんのランチ ポルトガル〉については、先日紹介記事を書いた

先週の土曜日、今度は青山目黒で開催中の〈子ブタをおんぶする〉の展示とパフォーマンスを観てきたので、そのレポート記事を書くことにする。

今回も「現代アートがわかりたい」人のために、なるべく平明な文章で書いていこうと思う。

 

青山目黒は中目黒から徒歩8分の場所にある。

駒沢通りを祐天寺のほうに歩いて行くと、右側にある1階がガラス張りの建物がそれだ。

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この日は16時から折元さんの生パフォーマンスがあるというのもあって、時間前からたくさんの来場者が集まっていた。

ぼくたちが到着したときはまだ16時前だったので、まずは展示をみることにする。

ガラス窓の対面にある大きな白い壁には、額装された大判のポートレート。

子ブタを背負っている折元さんのセルフ・ポートレートだ。

フライヤーで使われている写真と同じものである。

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そして壁に向かって左側の壁面には、この〈子ブタをおんぶする〉のためのドローイングが数点飾られている。

これもフライヤーに使用されているドローイングだが、ここでは現物が見られる。

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紙質や筆致は印刷物では確認できないので、貴重である。

このドローイング、よく見ると黒、赤、青、緑のボールペンで描かれている。

たぶん手近にあった4色ボールペンで描かれたのではないかな。

そして、右側の壁面には茨城の養豚場で撮影された〈子ブタをおんぶする〉のパフォーマンス映像と、それを印刷物のかたちに落とし込んだチラシが展示されていた。

 

ここで、事前情報として、折元立身の作品の発表方法について補足しておこうと思う。

折元さんの作品は、ある場所に行って、何かをするということ。

有名な〈パン人間〉もそうだし、〈500人のおばあちゃんのランチ ポルトガル〉も同じである。

しかし、このライヴパフォーマンスを重視する表現方法だと、その場所にいた人にしか作品を観てもらえないことになってしまう。

そこで、折元さんは自分のおこなったことを「記録」化し、ポスターやチラシなどの印刷物を作成して、それを世界中のギャラリーや美術関係者に送付する。

このような方法により、ライヴパフォーマンスというその場かぎりの表現を「記録」として定着させ、またその場にいることができなかった者たちにも表現を伝達することができるのだ。

それは自身の「生きざま」をより多くの人に観てもらいたいという、アーティストの欲求がなせるわざである。

そしてその根底には、後にこの日のアーティストトークで何度もご本人がおっしゃっていた、「寂しさ」があるのだ。

青山目黒の展示も、CAPSULEでの展示と同じように、あるパフォーマンスのプランニング段階である「ドローイング」、実際のパフォーマンスを記録した「映像作品」、そしてそれを全世界に配信する媒体としての「印刷物」が網羅されており、作品の誕生からそれが観る者に届けられるまでの一連の流れを見ることができる。

しかし、本当に折元立身の作品を観たというためには、彼自身が重視している生のパフォーマンスに立ち会わなければならない。

それこそが、一見網羅的に見える展示には欠けている最後のピースであり、最も重要なものである。

で、この日はそのパフォーマンスが観られるとあって、多くの人が集まっているのである。

 

この日の折元さんのパフォーマンスは、〈子ブタをおんぶする〉とも関連する、動物を使った「アニマル・アート」であった。

今日のために用意された動物はアヒルと鴨が1匹ずつ。まだそんなに大きくない。

折元さんはまるで昔の鉄道駅の駅弁の売り子のように、赤い箱を身体の前に抱えている。箱の中にはアヒルと鴨。

箱を抱えた折元さんは、円を描くようにして会場を歩く。

片手にはディナーベルのような鈴(たぶん〈500人のおばあちゃんのランチ ポルトガル〉でも使用していたものであると思う)を持って、これを振りながら歩くと、アヒルたちが呼応して鳴きだす。

ひととおり歩くと、今度は杖を取り出し、身体を傾けて杖をつきながら歩き回る。杖は2本。茶色いのが折元さん自身の杖で、白いのがお母さんの使っている杖らしい。杖をついて歩くことにより、箱がかしいで、アヒルたちがそこから落っこちそうになる。

次に布きれを取り出す。黄色や赤地に白い水玉模様などのカラフルな布地。これを箱にかけたり、自分の頭にかぶったりして歩き続ける。

そして、ここから観客がパフォーマンスに参加する。

足許にあったバケツの水を、次々と折元さんにあびせるのだ。

水を浴びた折元さんは頭からずぶ濡れになり、驚いたアヒルたちが箱から飛び出す。

折元さんはうずくまり、床を這いずり回りながら、そのアヒルたちをふたたびつかまえようとする。

“Don’t escape!” “Babyちゃん!” “Mama!”などのことばが、その口からあふれだす。

やっとつかまえ、箱の中にアヒルを納めたと思っても、次の観客がまた水をあびせるので、アヒルたちはまた飛び出してしまう。

“Don’t escape!” “Babyちゃん!” “Mama!”

大勢の観客のなかには、折元さんが水を浴びせかけられるたびにうめき声をもらす人や、床に突っ伏してアヒルたちに手を伸ばす彼を見て涙ぐんでいる者もいる。

床一面が水浸しになるくらい何度も水をかけられ、パフォーマンスは終了した。

椅子に座った折元さん。最後のおまけにバケツの水をもう1杯。

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写真 2014-11-29 16 44 275ぼくはパフォーマンスは肉眼で見ようと思っていたので、ここでようやく撮影できた。

ご覧の通り、もうめちゃくちゃである(でも意外にアヒルと鴨は水浴びができて楽しそうだった)。

この後、乾いた服に着替えた折元さんは、東京都現代美術館の学芸員さんおふたりとギャラリートーク。

自身がニューヨークやベルリンでフルクサスやヨーゼフ・ボイス、ナム・ジュン・パイクらから学んできたこと、アニマル・アートについて、印刷物を作るということについてなど、語っても語り足りないくらいの勢いでお話ししてくれた。

ご本人は現在、美術館でいままでの作品やドローイング、関連資料をまとめた大規模回顧展をやりたいのだそうだ。

ぼくもそんな展覧会が開催されるのであれば、国内であろうが海外であろうが是非見てみたいと思っている。

折元さんは世界が注目する稀代のアーティスト。グズグズしてると海外で先に回顧展、やられちゃうと思うよ。

 

***

追記(12/3)

1点、とても大事なことを書き忘れていた。

この日の折元さんのパフォーマンスは、今年の6月に両親のネグレクトによって亡くなった岸本紗弥音ちゃんに捧げられた。

それは岸本紗弥音ちゃんという親の愛に恵まれなかった少女の記憶を、この世にとどめておくためのパフォーマンスだった。

 


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