折元立身の個展が池尻と目黒のギャラリーで同時開催中。両方見られるのはあと1週間だけ

先日、三軒茶屋周辺を散策した。

シニフィアンシニフィエでパンを買ったり、世田谷ものつくり学校に顔を出したりしたあとで、池尻大橋の駅のほうまで歩いていたら、おしゃれな雑貨店やレストランがまとまったビルの中にギャラリーがあることにきづいた。

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CAPSULEというギャラリーで、ぼくは初耳だったのだけど、妻によると最近割と有名なギャラリーらしい。

なんと、ちょうど折元立身の個展を開催中ということで、ふたりとも次の用事まではまだ時間があったこともあって立ち寄ってみることにした。こういう偶然ってうれしいものである。

さて、折元立身ってだれ? っていう方に簡単に紹介しないといけない。

1946年生まれの折元は、ニューヨークでビデオアートの開拓者として知られるナム・ジュン・パイクとの交流や、前衛芸術運動「フルクサス」との出会いを通じて、ライブアートの作家としての活動をスタート。1990年初頭からは、パンを顔につけるパフォーマンス『パン人間』を発表したほか、アルツハイマーの母をテーマにした『ART MAMA』シリーズの作品『スモールママ+ビッグシューズ』で国際的に注目された。(実母の介護もアートにする折元立身、新作個展は『BIG BREAD』CINRA.NET

アルツハイマー病の母親との「共同制作」となる「パン人間」のパフォーマンスはかねてから有名で、とりわけ「介護をアートする」という文脈で記事にされることが多いのだ。

また、この「パン人間」のパフォーマンスは写真作品として記録されているのだが、その評価も高く、ロンドンで活躍するキュレーター・ライターのシャーロット・コットンが、その著書のなかでこう評してもいる。

「パン人間」と題したパフォーマンスを行なうのは日本人の折元立身(1946-)である。彼は彫刻のように組み立てたパンで顔を覆い、日常生活を過ごす。その漫画のキャラクターのような様相に反して、パフォーマンス自体にドラマティックな展開はない。パンで顔を覆った格好は、奇妙ではあるが恐ろしいものではなく、街中を歩き回っても大抵の通行人は無視する(まれに興味を抱く人もいる)。だが、こういった不条理主義者が介入する写真が成立するかどうかは、周囲の人々が日常を中断し、そのアーティストと関わり、いっしょに写真に写ることをよしとするか拒絶するかにかかっている。折元はパンのかぶりものを使用して、アルツハイマー病の母親とのポートレイトを撮影し、病気で変わってしまった彼女の精神状態と、パフォーマンスにより変容した彼の身体の融合を視覚化させた。(『現代写真論 コンテンポラリーアートとしての写真のゆくえ』シャーロット・コットン・晶文社)

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さて、そんな折元立身のCAPSULEにおける個展は、ポルトガルにおけるパフォーマンス作品「500人のおばあちゃんのランチ ポルトガル」の記録映像と、ドローイング、関係資料の展示である。ポルトガルのとある街の修道院に、折元は地元のおばあちゃんたちを招待し、ランチを提供する。ランチのメニューはかぼちゃのスープ、アヒル肉のチャーハン、デザートやワインというシンプルなもの。そのランチを折元自らが給仕し、食堂を動き回って声をかけ、一緒に歌い、談笑する。

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「だれかといっしょにランチを食べる」という普段ぼくたちがごく普通にしている(あるいは時に怠りがちな)行為を、折元は500人という規模に拡大することで、その意味や効用を再検証し、ぼくたちに提示しているのだ。

ギャラリーのある同じ建物には、SUNDAYというカフェレストランがあり、こちらでは折元が80年代に欧米の都市を回ったときの写真が展示されている。

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パリやロンドンなどの街の一部を切り取ったこれらの写真には、折元の履いたスニーカーが映り込んでいて、彼が「そこにいた」ことの決定的な証拠写真となっている。

写真というのは面白いもので、プリントに写った対象物が「そこにあった」ことを証明するいっぽうで、撮影者が「そこにいた」ということは証明してはくれない。当たり前である。撮影者は撮影しているのだから。しかしその当たり前を、折元は軽やかに転換して気づかせてくれる。

さて、CAPSULEでの個展とは別に、上目黒のAOYAMA MEGUROでも「子ブタをおんぶする」という展覧会も開催されている模様。

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ドローイングの子ブタの表情がコミカルで思わず笑ってしまう。

さて、折元はなぜ子ブタをおんぶするのだろうか。こちらの展覧会は12月6日までなので、興味を持った方はぜひ足を運んで、その目で見て、考えてほしい。

ぼくもなんとか時間を見つけて、のぞいてみたいと思っている。


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