#003 世界がメキシコ伝統料理を見つけるために

前回はcookbookの魅力について、思うところをいったん書いてみた。

とはいえ、このマガジンを書いているぼく自身でさえ、まだcookbookの魅力については手探り状態なところがある。

であれば、大事なのは実践だ。

というわけで、今回からしばらくはPHAIDON社の「MEXICO THE COOKBOOK」を賞味していくことにする。

このcookbookについては、#001で思わずジャケ買いをしてしまったと書いた。しかしこうして手にとった以上、まずはこの書籍が誕生した背景について、きちんと把握しておかねばならない。

この本の著者 Margarita Carrillo Arronte氏は、メキシコシティにあるレストラン「Turtux」のオーナーシェフである。ニューヨークにある世界最高レベルの料理学校 CIA(諜報機関のほうではなく、The Culinary Institute Of America)やフランスの料理学校 Le Cordon Bleuで教鞭をふるい、2012年にメキシコのロス・カボスで開催されたG20でも各国首脳に料理をふるまったというのだから、その腕前は推して知るべしだろう。

だが、そのような経歴はどうだっていい。タレントシェフの料理本なら巷にあふれている。このcookbookも数多くあるそんな料理本に過ぎないのか、とぼくは危惧してしまった。

前回書いたとおり、ぼくが興味あるのは、そのcookbookに「人間の生の営みに裏打ちされた世界」があるかどうかだ。

だが、運のいいことに「MEXICO THE COOKBOOK」にはそれがあった。ヒントとなったのは、カバーの後ろ袖に記載されていた一文だ。

Margarita Carrillo Arronte … has devoted nearly 35 years to help traditional Mexican cuisine find its way to every corner of the world.

彼女はメキシコ伝統料理を世界中に広める方法を発見するため、35年にわたりその人生を捧げて続けてきた。

調べてみると、メキシコにおいても隣国アメリカのジャンクフード文化が流入し、肥満の増加が社会問題となっているらしい。それは同時に、伝統的なメキシコ料理のレシピが危機に瀕しているということでもあった。

著者のMargarita Carrillo Arronte氏は、そんな現状にいち早く危機感を抱き、メキシコ伝統料理の文化の保存に奔走する。その甲斐もあって、2010年にはメキシコ料理はユネスコ世界無形文化遺産に登録されることとなった。

これにより、世界は「コロンブス以前」からあるメキシコ料理の伝統を再発見したのだ。

2013年に和食がユネスコ世界無形文化遺産に登録され、現在もなお和食ブームが世界を席巻しているが、これはメキシコ伝統料理のたどった道すじをそのまま踏襲していると言えそうだ。

この動画をぜひとも観てほしい。

彼女のメキシコ料理の原風景は、幼いころに母や祖母と一緒に料理し、家族や友人たちと食卓を囲んだ思い出だという。

そんな彼女が著したcookbookなれば、そこからは間違いなく「世界」を読み取ることができよう。

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